にわかに別ページ。
ハイデリヒについてはけっこう語ってしまったので、重複する部分も多々ありますが。
彼は純粋にエドのことが好きだったと思います。えーと、つまらないと思っても、ここ
ではCP思想は抜きで考えてくださいませね。
彼は別世界の話ばかりしているエドに焦れてはいますが、なかなか本気で怒れない
のは、単に優しいばかりではなく、自分がその別世界の異邦人に憧れてもいたから
ではないかと思います。
未来と途方もない可能性とをエドの向こうに見ていて、だから簡単に切り捨てることも
できず、しかし心を開いてももらいたい。そして当のエドはというと、元居た世界に戻る
ことを望みながらも、そのために手立てを探求する気力を失いかけている。
自分と自分の世界をエドに現実として認めさせたい一方で、情熱をなくしているエドの
姿を見ると苛立つ、そんな感情の板挟みになっていたのでは。
そこをあえて踏み越えようとしなかったのは、彼が自分の命がもう長くはないことを
知っていたからでしょうか。迷惑を承知で転がりこんだ時点で、エドにとってハイデリヒの
存在は充分に特別です。それはハイデリヒにも分かるけれど、完全に寄りかかられても
彼はずっとエドの傍には居られないわけです。
だから彼も、エドとは違う部分でずっと迷い続けていたのかもしれない。このまま弟の
姿を映した優しい鏡のままでいるか、血肉をもった人間として存在を示すべきなのか。
その答えが、おそらく扉を実際に目にした瞬間、彼の中ではじき出されたのでしょう。
自分が生きていた証を、エドを帰すことによって、エドの中に刻むことを。
彼はエドの愚かさも裏切りも、すべて許していたと
思います。許してしまう人だったと思います。
そしてそんな彼の存在があったからこそ、エドは
もう一度すべてを振り捨て、錬金術世界を弟に託し、
自分は現実世界に開いた門を閉じなければと考えた
はず。
彼は兄弟にとって、忘れられない人なのです。
ともに暮らしたエドにも、夢の中で「ハイデリヒその
人になっていた」アルにも。
彼がいなければいずれにせよ兄弟の再会はかなわず、
彼が行動を起こさなければエドはただ流れゆくままだった。
己の歩く道、その場所が現実であるという、重くて大切で
単純な真実をエドが見つけることができたのは、彼が居た
からだと、そう信じます。
やさしくて、つよいひとだった。
どうかあなたのうえに、限りない光があるように。
あなたに、花を。
2005/7/29